Londonの12週間   KGH



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2001年3月31日午前6時ロンドンヒースロー空港に一人で降り立った。 ホストマザーはマリラという名前のポーランド出身の人で丸々太った気さくな人である。 この家で12週間生活するのだが、初めての経験で一抹の不安があった。 家は5件長屋であり契約は1日2食つきなのでその 日の昼食を手配しなければならない。仮眠後地下鉄 に乗ってロンドン中心部に出かけ昼食と翌日から通う語学学校の確認と付近の散策 に出かけた。 地下鉄に乗ってびっくりしたが約1/3は非白人である。(私もその中の1人)ニュー ヨークはミックスサラダと聞いていたが、ロンドンも同じだと思う。

次に驚いたのは歩行者が信号を守らないことだ。少しでも車が切れると赤信号を無視して 渡っている。私は最初信号を守っていたが一人取り残され自分がバカに見えたので、以降 率先して信号無視をするようにした。但し自分が悪くて事故を起こすと、ドライバーはおとがめ なし、もし相手がタクシーなら休業補償等で莫大な損害賠償を請求されるそうである。イギリスは 個人主義が徹底しているそうなので、リスク覚悟で自己責任の元に信号無視をしているので あろう。但し車はキチンと信号を守っている場合が多かった。

学校はトラファルガー広場から歩いて5分の ところにあり、地下鉄、British Rail駅からも近く便利な所にある。有名なネルソン提督の足 元のライオンは威厳がある。 3日も経ったら日本に帰りたくなったが、自分の意思で来たのだから12週間頑張ら なければと自分に言い聞かせた。朝食は牛乳、トースト、コーヒーを自分で用意して、 夕食はスープと一品の料理でバラエティに乏しかった。 おかげで5kgやせたが帰国後すぐ元に戻った。物価は日本より高く1ポンド100円位 の使いでしかなかった。但しビールは日本よりも安く冷蔵庫を持っていなかったので毎日一本 づつギネスビールを買って帰って飲んだ。
*英語を英語で習うのは初めての経験で授業はさっぱり分からず肝心の英語は全く上達 しないためイギリス滞在を楽しむようにした。イギリスはグッドフライデーからイースター マンデーまで休みなので旅行会社に行きアイルランド旅行の手配した。 アイルランドは前から行きたかった国の一つであったが、いざ来てみると地の果てという 感じで日本に比べ樹木の少ない国との印象であった。特にアラン諸島のイニシュモア島 は岩と草しかない感じでよくこんな所に住めるものだと感心した。しかし日本にはない風景 で興味深かった。ガイドブックによるとアイルランド人は気骨があり私は大好きである。 アイリッシュウイスキーのスペルをwhiskeyとしたのなどはその最たるものであろう。 蛇足ながら私の好きなギネスビールもアイリッシュビールである。

*英語を英語で教えるのは文部省も推奨しているが実施している学校は少ないそうだ。(テレビニュースより)

ロンドンには世界的に有名な博物館・美術館がありその大半が入場無料(寄付箱あり, シニアのみ無料の館もある) である。放課後暇なときは大英博物館やナショナルギャラリーを始め各博物館等に行き世界 の宝を鑑賞した。
毎週金曜日には学校が指定したパブに留学生が集まり、けんけんがくがくの議論をするので 殆ど毎週パブに行きギネスビールを飲んで楽しいひとときを過ごした。それは苦くこくがあり クリーミーな泡がなんとも言えない。日本でも購入できるが高価である。 ギネスブックはこのビール会社が発行している。

週末の朝早く繁華街を歩く時は特に足元に気をつけないと汚物、前夜の食べかす、包 装袋等が散乱していて踏んずけてしまう。朝5時頃清掃車が出て掃除をし、人々が出てく る頃はきれいになっている。ロンドンのスモッグは有名だがそれは昔のことで、今は石炭 を焚くのが禁止されていて暖炉は飾りになっている。従って霧(スモッグ)のロンドンは 昔話だそうである。
ロンドンの駅のトイレは有料トイレが多く小銭を持っていないと不便である。 またどこの公衆トイレにもコンドームの自動販売機を設置している。これはエイズ予防の 啓蒙であろうか。しかし一度も購入している人には出会わなかった。
イギリスのことを悪く書いた本にすぐ湯が出なくなると書いていたのを読んだ記憶があるが、 ロンドンは各世帯に湯が供給されていてコックをひねれば湯が出てくる。 従ってピーク時の供給には対応できないのではないかと思う。私が住んでいる 北九州市は湯の供給はなく個人でボイラーを購入しなければならない。
日本人は自分のことを本州人とは言わないが,イギリスではイングランド人はEnglish, スコットランド人はScottish,ウエールズ人はWalish,北アイルランド人はIrishと言い, Britishとは言わないそうである。(私が話をしたごく少数の人の話として) 但し移民はBritishと呼ぶ人もいるようで,ホストマザーは自分のことをBritishと呼んでいた。 もしこの表現が一般的であるならEnglishに英国人という訳をつけるのは一考を要するの ではないだろうか。 それと外国で貴方はどこからきましたか?と聞かれた場合イングランドから来た人はイングランド から来た。と答えるがイングランド以外から来た人はU.Kから来たと答える人が多いようだ。 私はU.Kと答えた人にはU.Kのどこかと尋ねることにしている。
12週間のうち土曜日家に帰ったのは3回位で他の週はイギリスの 各地に予約なしで一泊旅行に出かけた。ホストマザー にもし泊まるところがなければ今夜帰宅すると言って出かけたが、問題なく泊まることが 出来た。小さな駅でもインフォメーションがあり簡単に宿泊の予約が無料で出来る。 (但しデポジットとして10%程度必要)前日に列車の切符を購入し指定席を要求し空いていれ ば無料で指定券を貰える。ロンドンの各駅(Londonと言う名前の駅はない)は自分が乗る 列車が何番ホームに入るのか発車15分前ぐらいにならないと分らない。 大勢の乗客は大時刻表を見ていて自分が乗る列車のホームが表示されると一斉に移動を はじめる。もう一つ日本と違う点は改札口がないことで、発車したら車掌が切符を切りに来る。 従って乗車券は取り上げられないので記念に持って帰れる。イギリスの列車は時間が正確だ ということであるが、たしかに始発駅の発車時間は10/10回正確であった。しかし終着駅への 到着時間は2/10回しか定時に到着しなかった。 (5分遅れを問題にしているのではない、8回遅れたが1時間以上の遅れは珍しくなかった。 そのときはホストマザーが、isaoは○○時に帰って来るといったが遅かったじゃない?と言われたが 遅れたのは私の責任ではないことが言えなく悔しい思いをしたことがあった)
地下鉄の定期(トラベルカード)は同じエリアのバス、British Railにも乗れるので朝早めに 家を出てバスや列車で通った。地下鉄通学は初めての経験で興味深かったが、なれてくると トンネルばかりで景色も見えず暑く、うるさいため他の通学手段を探し時々バス、列車で 通学した。朝の登校時にバスを待っていると、どう考えても間引き運転していると思ったことが 何度もあった。もし英語が上手であればバス会社に苦情を言いたいところであるが、残念なが ら我慢せざるを得なかった。イギリス人は文句を言わないのであろうか?それともバスの時 刻表は参考であろうか?私は時間に余裕を持って家を出たのでそのために遅刻したことは なかったが、ギリギリに家を出る人は遅刻してしまう。
ある人にロンドンは好きですかと尋ねられた時「良いところ悪いところ色々あるが、どちら かといえば私はロンドンが好きです」と答えたが、今でも気持ちは変わっていない。
イギリスは昔ながらの田舎が沢山が残っていて観光客の目を楽しませてくれる。イングランドは コッツウオルズの村々をはじめとしてストラトフォードアポンエイヴォン、ソールズベリ、ランズエンド、 ペンザンス、プリマス、トトネス、ドーヴアー、サウスエンド、スコットランドのエジンバラ、 ウエールズのスノードン山と各地に旅行したが、特に印象に残ったのはリヴァプールにある ジョン・レノンの生家に行ったとき、ガイドが「彼は家を出るときはスーツケース一つ持って出かけ たが、帰った時はロールスロイスに乗って帰って来た」と言った事だ。 {(余談だがビートルズのメンバーは(一部?)アイルランド系で、irishにはdead panというジョークが ある。---彼らが女王から勲章を貰ったため、抗議して勲章を返した元軍人が居た。(新聞記事より) そのことを聞かれたジョン・レノンは私たちは人を殺して勲章を貰ったのではない、人を楽しませて 貰ったのだと言った。これぞdead panだそうだ。(街道を行く・愛蘭土紀行より)} リヴァープールはビートルズの出身地ぐらいしか知らなかったが、かって奴隷貿易の港だったそうで どこにも暗い歴史があるのだと思った。私が行ったときは港祭りの最中で大勢の人が思い思いの 船でパーティをしていたが、私は横目で眺めるしかなかった。B&Bも殆ど満員だったが運良く安ホテル が空いていて日帰りせずにすんだ。
 私がロンドンで生活し一番良かったことは40年間吸ってきた煙草 を吸わなくなったことである。理由は1箱4ポンド50ペンス(当時のレートで900円程度)もするためである。 止めるのは簡単で脂汗も出ずすんなり止められた。(2016/10月現在まで吸っていない。自分の意思で 吸おうという気持ちになれば再開するであろうが、今のところそういう意思はないし、年間10万円の 煙草代はもったいない。) ロンドン滞在中ポーランドに旅行したときヒースロー空港の免税店を覗いてみたが、タバコは3400 円ぐらいだった。日本は千数百円なので差額はどこにいっているのかと思った。 日本は物価高だが煙草の値段は他の先進国と比較して安いほうに入るのではないだろうか。 ニュージーランド、カナダでも日本よりずっと高かったような気がする。煙草を吸わなくなったことは 健康面でも経済的にも良かったと思うが、山登りに行くときにライターを忘れるようになった。
今度イギリスに行くときは往復航空券だけ購入し湖水地方を中心に各地方都市の B&Bに泊まり、まだ行ってないところにも行きたいと思っている。 (しかし2004年暮れに訪れたときはパッケージツアーで黙ってついていくだけでよかった。 トラファルガー・スクエアーは大分様変わりしていたし、ナショナルギャラリーも工事中だったが 入場でき世界の名画をタダで観賞できた。) 私が滞在中湖水地方の農場は口蹄疫の関係でフットパスが閉鎖されていたため行け なかった。 気さくなホストマザー、マリラにも是非会いたいし、私がプレゼントしたバラはIsao's rose と名づけたそうであるが成長ぶりも見てみたいものだ。
以上

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